2004年から年に3-4回本当につらいときだけご来院される鎌倉市七里ガ浜在住のHさん(女性/61歳/会社員の方)が先日来院されました。
聞くと2か月前から時折、左手にしびれがあるとの事。

鎌倉市の脳神経科でMRI検査をしたが異常なし。
職場近くの東京の病院で健康診断時に内科の医師に手のしびれを相談したが、あまりその症状に詳しい感じではなくビタミンB12を処方されただけで効果を実感できずとのことです。

どうしたらいいのかわからない?

そこで、ここ鎌倉のアロハカイロ&フットパラダイスに何度目かのご来院を頂いたというわけです。

しびれを引き起こす原因

しびれを引き起こす原因としては、脳の病気、脊髄の病気、手足の末梢神経の病気などが挙げられます。
同じしびれでも正座をすると足がしびれるような場合は誰もが経験していますが、このような場合は時間が経つとしびれは治ります。
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問題なのは病気が原因で生じるしびれ。例えば脳の血管が詰まったり、破れたり、腫瘍などの脳の病気が原因でしびれが生じます。また脊椎に異常があったり、首(頚椎)や腰(腰椎)などの異常で神経が圧迫されたりして、しびれが生じる場合も多くあります。

さらに糖尿病の症状として、末梢神経の障害を生じてしびれを起こす場合や、ウイルスの感染や更年期障害、ストレスなどによってもしびれが生じる場合もあります。

NIPRO すこやかネットより引用 https://www.nipro.co.jp/sukoyakanet/32/

しびれを引き起こす主な病気

  1. 大脳や脳幹部の障害・・・脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、パーキンソン病、脳炎など
  2. 脊髄・脊椎やその付近の障害・・・頚椎症、椎間板ヘルニア、脊髄炎、脊髄空洞症、脊髄腫瘍、悪性貧血など
  3. 末梢神経の障害・・・頚腕症候群、手根管症候群、多発神経炎、糖尿病、尿毒症、腫瘍、副甲状腺機能障害など
  4. 筋肉の障害・・・多発筋炎など

NIPRO すこやかネットより引用 https://www.nipro.co.jp/sukoyakanet/32/

末梢神経圧迫でしびれを引き起こす箇所

末梢神経が神経の出口や筋肉で圧迫を受けて、しびれを引き起こす箇所があります。
それがどこかを示したのがこの図です。
上肢の神経

1、神経根

上記の[しびれを引き起こす主な病気]で頚椎ヘルニアや、頚椎症がこれに当たります。
神経の出口で椎間板から突出したヘルニアや骨の変形で神経が圧迫されるケースです。

2、胸郭出口症候群

胸郭出口はどこかとざっくりいうと、首の周りのことでU首Tシャツを着た時のU首の辺りのことです。
胸郭出口の解剖模式図
この図では斜角筋群と小胸筋の間を腕の神経が通っている様子が見れますが、ここで圧迫がある場合、胸郭出口症候群と呼ばれるケースです。

3、円回内筋症候群

下の図が円回内筋の模式図です。
回内筋群の解剖模式図
この円回内筋の下を正中神経が通っており、ここで圧迫されると、正中神経の領域に(例えば手のひらの親指側3/4)にしびれが出たりします。また、雑巾を絞るような腕を内側にねじる動きで、肘の内側に痛みが出たりします。

4、手根管症候群

上の図の[方形回内筋]のすぐ下(指先側)に手根管トンネルがあって、そこの通り道には様々な腱や血管、神経などが通っているのですが、ここが物理的に狭くなると手先へのしびれが出ます。

問診で絞り込む

脳神経科や健康診断を受診して、さして異常は見られないとのことですから、上記の[しびれを引き起こす主な病気]大脳や脳幹部の障害、頚椎ヘルニア、頚椎症、糖尿病、尿毒症、副甲状腺機能障害などのリスクは低そうです。

末梢神経の障害として頚腕症候群、胸郭出口症候群、手根管症候群などに的を絞って、カイロプラクティック検査と調整を進めます。

そのために問診で痛みやしびれのある箇所を質問します。
しびれと痛みがある場所
すると、帰ってきた答えは、胸、腕の裏(よく二の腕と言われるところですね)、肘、手首。

推測の前提条件には圧迫があると、その箇所から先にしびれや痛みを引き起こすということです。
手根管症候群なら手首から先にしびれがある、円回内筋症候群なら肘から先にしびれや痛みがある、という具合に。

ここで私が注目した箇所は、腕の裏と胸です。
腕の裏にもしびれがあるのであれば、神経圧迫はもっと上位の場所の可能性が高い。
1つには腕の裏は橈骨神経の領域なので、どこか上位の箇所で圧迫があり、それが橈骨神経と正中神経の領域にしびれが出ているんじゃないかという点です。

それと、胸に痛みがあるというのは、[胸郭出口症候群]の項目の模式図にある斜角筋と小胸筋はともに胸の前面の肋骨に付着しています。この筋肉が短縮して神経を圧迫していると仮定すると、肋骨の付着部に痛みがあるのではないかという見立てです。

私の見立てで可能性の高い順番は胸郭出口症候群の斜角筋群>神経根>胸郭出口症候群の小胸筋>橈骨神経の緊張短縮>正中神経の緊張短縮です。

検査

問診で的を絞った箇所にカイロプラクティックでできる徒手検査(器具を使わない手だけの検査)を実施します。

Oリングテスト

Oリングテストとは、患者さんに人指し指と親指でOKマークを作ってもらい、施術者がその輪を離すように力を加えて筋力の強弱をテストに取り入れるというものです。
身体にとって良くない状態では筋力が弱化し、身体にとって良い状態では筋力が強くなります。

詳しくはこのブログ内にOリングテストの記事がありますので、そちらをご参照ください。

☆Oリングテストその1☆☆Oリングテストその2☆☆Oリングテストその3☆☆Oリングテストその4☆
整形学検査アドソンズテスト
この図は整形学検査のアドソンズテストというものです。
これは胸郭出口症候群の検査に使われます。
これをOリングテストに流用します。

顔を右に向き、後ろに倒す動きで左の斜角筋群に緊張がかかります。
この体勢でOリングテストは筋力が弱化して輪が開いて、陽性。

触診

うつ伏せで首の両側を触診すると、左の前の首の筋肉が強い緊張を持っています。
下部頚椎(首の下の骨)は右側が後方にズレて、左側が前方にズレています。

上肢緊張検査

神経にも幾分かの伸縮性があります。
この検査ではどの神経が問題がありそうなのかを調べます。

神経は電気信号の通り道です。
通り道を分かりやすく例えるために、日本地図で五街道のうち三街道を取り上げます。
中山道、東海道、甲州街道等。

腕のどこら辺を通るかで、名前が付いています。
腕の親指側を通るのが橈骨神経。
腕の小指側を通るのが尺骨神経。
その間を通るのが正中神経です。

江戸から京都までの土地を肩から手のひらまでに置き換えて、先程の街道で例えると、橈骨神経が中山道、正中神経が甲州街道、尺骨神経が東海道みたいなものと想像してみてください。
しびれはどこかの街道で渋滞が起きているようなものです。

それがどこかを調べてゆく検査です。

正中神経検査

正中神経検査図
正中神経に何か問題があると、この体勢に腕を持っていくと軽い痛みやしびれが引き起こされます。
これも陽性で、そのままストレッチ調整を行います。

橈骨神経検査

橈骨神経検査図
橈骨神経に何か問題があると、この体勢に腕を持っていくと軽い痛みやしびれが引き起こされます。
これも陽性で、そのままストレッチ調整を行います。

カイロプラクティック調整

カイロプラクティックの対症療法としての調整は筋緊張を緩めることと首の骨のズレを元に戻すことが今回の主目的となります。

左斜角筋調整

緊張短縮している左の斜角筋をマッスルエナジーテクニックというオステオパシーテクニックで緩めます。

頚椎左前方変位調整

前方にズレている下部頚椎にコンタクトして極々弱い圧でズレを元に戻します。

肋骨調整

第5肋骨にズレと圧痛があったので、左の腕全体をテコに使った肋骨調整を行いました。
これは小胸筋を緩める目的もあります。

再検査

検査の方向性が間違っていないか、調整がうまくいっているかを確認するためアロハカイロ&フットパラダイスでは、再検査は必ず行っています。

Oリングテスト

先程、陽性になった顔を右に向き、後ろに倒す動きで左の斜角筋群に緊張がかかる体勢を取って、Oリングテストを再検査。
結果筋力は弱化せずしっかりとOリングは閉じたままで筋力が強いままです。
再検査の結果は陰性ということです。

フィードバックとHさんの感想

ここまで長らくお読みいただきありがとうございます。
検査の結果、こういう所が緊張していたので神経を圧迫してしびれを出していた可能性がある、という事とこれでしびれの状態が収束するならおそらくそれが原因でしょう、というフィードバックを行いました。

Hさんの感想は施術の前と後の違いを実感できたことと原因がそれかもしれないという可能性を示してくれたことが安心材料になったとのことです。

体の不調でどうしたらいいのかわからない?という状態が長く続くのは不安ですよね?