前回は施術者の立場からみた脚長差についてでした。
さて、今回はまだ私が中学生だった頃の話です。
そのセミナーの情報を知ったのは市の発行する広報誌にセミナー告知の欄があり、そこに身体の歪みを直すセミナーと銘打って載っていたのをたまたま見たからでした。

 今にして思えば身体の歪みに興味があるなんて我ながら変わった中学生だったな、と自嘲したりもするのですが・・・その当時少年マンガ誌には○×式長身法などの広告があり、身体の歪みをとると背が伸びる!!風なキャッチコピーが脳裏に焼きついていたから、興味があったのかもしれません。

 さて、当日会場は市の中心部にある市民会館の一室で和室でした。
広さは約20畳。スタッフは白衣を着た先生風の男性と中年の女性が2人。
参加者は私を含めて5人ほどです。ウィークディの午後早くに行われたためか、私以外は専業主婦風の女性ばかりです。
セミナーの前半は身体の歪みがいかに健康にとって有害かを強調する内容でした。
そして、参加者の中からモデル一人が選ばれます。
彼女を被験者にして、身体に歪みがあるとはどういうことなのかを説明していったのです。
その中で、骨盤の歪みからくる脚の長さの違いが紹介されていたのです。

 さて、ここからがセミナーの核心です。歪みが出来る原因は寝具に問題があり、この寝具とある調整法を使えば身体の歪みは無くなり、健康になる!!というものでした。
その寝具と言うものは、私にはただの畳に周りを木枠で囲んだものにしか見えないませんでした。
なにやら効能がある構造のように講釈をしていたのですが、その時点で胡散臭さ全開でした。

 そして、先程選ばれたモデルの女性をその寝具の上に寝かせ、なにやら調整を施すと確かに脚の長さが同じ長さに揃うのです。
さあここで、その寝具の値段の発表です。
確か、10万から15万円ぐらいの値段だったと思います。(はなっから買う気が無かったのであいまいなのですが・・・)
後は、全員に購入のための契約書が配られます。その中で気弱そうな主婦2人組にスタッフの女性が張り付き、説得を開始します。

「今すぐに決めなきゃ!」
「いや~帰って主人に相談してみないとー」
「健康のことを考えたら、これは安い買い物だから・・・」

と、そこへ中年の男性が突如入室してきて土下座をし、大きな声で挨拶を始めます。

「先生、遅れて大変申し訳ありませんでした。○×市(セミナー会場から約70キロ離れた街)からやってきた△☆でございます。おかげさまで、その後も体調がすこぶる良く今日も調整をして頂きたくやってまいりました!」

すかさず、スタッフの女性が言います。
「ほーらね。あんな遠くからでも健康になったて来る人がいるのよ!悪い物なはずないでしょ!」
胡散臭い。胡散臭すぎる!

 土下座をして口上を述べた男性の棒読みのようなセリフ。
しかも、絶妙のタイミングで入ってくる不自然さ。
その当時私は中学生だったのです。
中学生と言えば頭の中は単純でいつも考えていることと言えば腹へって食うことと、女の子のことぐらいしか無かったんじゃないかと思います。(極端に言えば左脳に食欲があり、右脳に色欲があるような・・・)
そんな中学生に胡散臭いとバレバレのセミナーだったのです。
当然、彼らはイガグリ頭の見るからに中学生の私にはわき目も触れず、契約獲得に邁進をしている様子でした。

 その後、成約があったのかどうかは知りません。
ただあの種の商法は同じ土地で何度も使えるものではないと思うのです。
まだあのやり方は健在なのでしょうか?
健在なら全国津々浦々行商をしているのでしょうか。

 ただ、あの当時、脚の長さの違いを見せられた時は参加者全員が「おぉ!」と驚いたのです。
そして、長さが揃った時またもやそれ以上に驚いていたのです。
そして、冒頭の感想に立ち返ってつくづく脚の長さの違いについての認識(=健康知識に対する認知度)が変わったものだと思うのです。