確か32歳の頃だったと思います。
12月末で会社を退職して4月にカイロプラクティックの専門学校へ入学するまでに3ヶ月という全く何をしてもいい時間がありました。
その時、私が何をしていたかというと、勉強。
大学受験以来、嫌いな勉強をしたことが無かったのに、です。
(今思えば、時間的にこんな自由な期間はそんなに無かったので、長期に旅行でも行ってれば良かったかな、とも思うのですが)
で、何を勉強していたかというと二つあります。

 ひとつは骨のスケッチ。
以前話に出た、カイロプラクティックの先生のところに出入りしていた頃に、そこの先生が余ってる骨格模型があるからそれを見てひとつの骨ずつスケッチしてごらん、と勧めて頂いたからです。
スケッチというのは対象物を凝視する。
これによって骨の立体感覚がつかみやすく触診に役立つ、という理由からです。

 そして、もうひとつは自主的に基礎的な解剖学を独学することでした。
専門学校に入学したら、一から授業で習うことは出来ます。
ただ、私も脱サラをしてある技術を学ぶわけですから、身体の構造を事前に勉強しておいて、入学時から一段高いところへステップアップしておきたかったのです。
そのときに使った教科書が「入門人体解剖学」藤田恒夫 著 この300ページはある解剖学の本を全くの素人の私が日中一人でラインマーカーを引き引き勉強していったわけです。

その時、あれ?そーだったのか!という気づきにちょっと感動したことがあります。
それはある関節。

 さて、少し話を変えて人体模型をごく簡単に粘土で作るとしたらあなたはどうしますか?
私の場合、粘土を三分の一ぐらいに分けてとり、残りの三分の二の量の粘土を筒状にこねて、上から丸みを持たせた頭を作り、その下をくびらせて首を作ります。
三分の一の粘土を4つに分けて、ひも状にこねて、短い2つを腕にして胴体にくっつけます。
同様に長い2つを脚にしてくっつけます。

この最初に胴体の部分を作ったのが、解剖用語で「体幹」と言います。
(この言葉はやはり特殊なようで「たいかん」で変換しても出てこない)
解剖用語や医学用語にはこのように一般の人が使う言葉とはかなり違う用語が非常に多いのです。

 話はまた戻り、腕は先程でた「体幹」にどこでくっついてると思いますか?
わたしも解剖を勉強するまでは、
-それは、腕の付け根でしょう?脇の上というか・・・
そう思ってた所はは肩甲上腕関節というところで、肩甲骨は「体幹」のうちの胸郭(肋骨で囲まれたかご状のもので中に肺と心臓が入ってるところ)の上をかなりの範囲で稼動することが出来るのです。腕が動くとき胸郭の上の斜面を滑走してるようなイメージです。ということでそこは「体幹」と関節を形成してません。

 では、どこかというと胸鎖関節。
ネクタイを結ぶと結び目にあたる両方の鎖骨の内側のボコッと出っ張った所です。
その出っ張った所が鎖骨の内側。
で、そのすぐ下にある骨が胸骨。だから、胸鎖関節という名前になるのです。
(橋やトンネルの呼び名に似てますね。本四架橋、青函トンネルetc)

 ご自分でもそこを触ってわかると思うのですが、この関節面は親指の先程の接触面しかないのです。
で、そこから先の腕をどう呼ぶかというと「上肢帯」
鎖骨、肩甲骨、上腕、前腕、手等など。
この上肢の重さがどれぐらいあるかというと、体重の150分の10。約6.6%です。
人体の部位別重量比については以前書いたコラム☆あなたの歪み度は?☆に載せてありますのでご参考にして下さい。

 私の場合は体重が60kgなので4kgです。
4kgある上肢が身体の幹の部分である「体幹」とこんな小さな関節面でしか繋がっていない、という解剖学的事実を一人で勉強していく途中で発見!し、ちょっと感動したのです。
思いもよらず長くなってきました。カイロプラクティック的にこの関節をどう診るかについては次回に。